母の衰えが進んでいる。ハッキリしているのは食欲の衰えである。
ここ数日、面会に行くたびに、母はベッドに横になってぐったりしている。
母がいる施設は10人一部屋と書いたが、さらに1人ずつ個室がある。
そのベッドで、目下連日、母はベッドに寝ている。

高齢に達した老人がさらに寿命を縮めるのは、たとえば転んだことが原因だともよく言われる。
母の場合も、3月18日、夕方、新参の職員が、ベッドから車椅子への移動を行なう際に、姿勢が不安定な母を支えもせずに車椅子に気をとられているさ中に起こった。明らかにミスである。

これについて問題視する気配もなく、私の夜間電話へのクレームばかり一方的で、母の転落事故については、その後の様子で、心配ないとの勝手な判断から、私への謝罪ひとことで終わりにしたつもりである。

母は、明らかに固い床(ゆか)に頭を強く打ち付けた。
既にベッドに臥しがちな様子だったから、この事故により、さらに衰えたとの疑いはぬぐえない。

だが、もはやことを荒立てる気はない。
こんなクソ出し女1人相手にする時期ではない。
何より母が可哀想だ。
もう、衰えるばかりの母は、そっとしておいてやりたい。

3月30日、私はまだ寝ぼけ半分でいた。
電話が鳴っていると思ったのは束の間で、目が覚めた耳元に、聞き覚えのある別の機器の発信音が響いた。

二度ほど鳴ったところで、完全に目が覚めた。あと数回聞いて、音はやんだ。
その時すぐには音の正体を突き止められなかった。
試しに枕もとのケータイから固定電話の子機にかけてみたが、全く異なる音楽が流れた。

ようやく音の正体がわかったが、妙だと感じた。
平成10年ごろだから、もう10年以上前のことになる。
当時、相変わらずかんしゃく持ちの父とのいざこざが絶えず、母はよく二階に上がって来て、私の隣の部屋に寝た。

その時、私はおやすみなさいを言う前に、ある機器を用意して、隣の部屋の寝床の母と、短距離通話をした。

3月30日に鳴ったのは、その頃よく使ったコード付きの通話機である。
しかし、電池もとうに切れて、全く機能しなくなっていた。
その機械がこの日、束の間息を吹き返したかのように発信音を立てた。私は機器が鳴ったとは思っていないが、音そのものは同じだった。

これで私は目が覚め、実はこの日の面会は休もうかと迷っていたが、身体が勝手に動いて、結果、自室のベッドに相変わらず横たわる母の姿を確かめることとなった。

母を館内の散歩に連れて行くことが面会の日課の一つだが、それもかなわず、およそ5時ごろ、早めに施設を出て、帰宅の途に就いた。

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