母が時々今生の別れ
母は目下足腰も元気で食欲もあり、かつて私たちにとても気を遣ったぶん、その神経の疲れを忘れ、主に食欲がかつてをしのぐ勢いであり、まるで今までのぶんを取り返そうとするかのように、頼もしい食べっぷりをほとんど毎日見せてくれる。

だが時々私に対して似つかわしくないほどのていねいな言葉遣いで話すことがある。
きのうだったか、母のベッドに近づいた私に「いろいろお世話になって、本当に申し訳ありませんでした」などと言う。
私は「お母さん、相手は息子なんだし、それにそれじゃまるで今生の別れだよ」と穏やかに否定するが、母は「だって現にそうなんだから」と、涙ぐみながら言う。

もし母が痴呆症の症状著しくなく、かなり正気のままだったとしたら、母はどんな様子だったろうと想像することがしばしばである。
もしかすると母の食欲は旧に戻るかも知れない。

そのぶんかつてのめまいなどの病が出るかも知れない。
だがその容態の母を見守って、看護してやるほうがいいのではないかと思えることがある。

母の脳に入って確かめることは出来ない。
母は今どう感じて明け暮れを過ごしているのだろう。
可哀想でならない。

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