さらぱ良き女よ

2005年8月16日
もう、夕子と呼び捨てにすることは出来なくなった。
思えばこれも数奇なお互いの運命に翻弄された数十年だった。
この「夕子」という名前は、つい最近彼女が自らの意思で改名した名前である。

私が感化したと本人は言う。役目の終わった私の置き土産の如きものとして、わずかながら、私の心は慰められる。
夕子さんは、私を心のよりどころとしてくれた。

楽天日記では、彼女をわがままと断じた日記交流の婦人がいたようだが、誤解である。
人には言えない複雑な事情ゆえに、彼女の人物像を時に悪女めいた描き方にせざるを得なかった。

夕子さんは、男としてのおよそ考えられる限りのいかなる魅力も欠く私の本質を見抜き、これをたたえてくれて、長年私を頼ってくれた。
だから私は彼女をこの世で出会った理想の女と評価している。

美しい彼女は、四十を過ぎた今でも美しく、プロポーションは若き日の姿をほとんど保っている。
そして何より好ましいのは、それほど美しい彼女が面食いではないことだ。

今、四十代の主婦の何割が、自前で漬物を丹精して作り続けているか。
彼女はぬかづけと塩漬けを欠かさず、毎日の食卓に必ず出している。
この味が私の母の、さらに言えば亡き祖母の漬物の味とそっくりである。

彼女の手は漬物のにおいがする。
上下見事に決めた服装でナナハンを駆ってブオンというエンジン音を響かせて帰宅すると、ライダー服を脱いであっというまに主婦に変身し、前掛けをして、漬物に向かう。

この大なるギャップにほれぬ男があろうか。
今、彼女は改めて人生をやり直さんと、心機一転、果敢に明日への挑戦の途についた。
もはや接近することかなわなき我が身なれど、年来の孤独を長年いやしてくれた彼女の前途を祝福したい気持ちでいっぱいだ。

前夫より楽しいと言い、実際バカばかりやった私の言動を楽しみおかしがり、幾度となく、私とやり直したいとまで言ってくれた夕子さん。
もう、余り自分を責めないで下さい。

思い出は作るものではなく、あとから振り返り、懐かしむものです。そして、あなたは私にたくさんの楽しい思い出を残してくれました。
ぜひ、ご家族の皆様共々、あなたも幸せになって下さい。
長いあいだ、本当にありがとうございました。

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